東北ベテランテニス選手権への旅〜会津若松の空の下で気づいたこと〜
遠征という名の小さな旅は、いつも少しの非日常を連れてきますね。
ベテランJOPに参加すること3年目、試合と共に小旅行の楽しみも増えてきた。
北は長野、西は愛知。少しずつ広がってきた私の「テニス旅の地図」に、今回、新しい点が追加された。
東北ベテランテニス選手権・グレードC。舞台は福島県会津若松市。
今年は会津総合運動公園。64ドロー。集合は14時半。
午前集合が多いベテラン大会では珍しく、今回は“前泊なしでいける”という、小さなラッキーつきだ。
■ 雨の旅路と、揺れる心
8月11日。夏の真ん中なのに空はどんより。
「ナチュラルのハイブリッドでいくか…。いや、雨ならポリのラケットか…。」
そんな悩ましさを抱えながら、東京駅で焼肉弁当を買い、東北新幹線で郡山へ。
電車旅の良さは、気楽なこと。そして、帰りにビールが飲めること。
ただ今回は埼玉を抜けた途端、車窓の外に広がるのは“雨の壁”。
テンションがスーッと下がっていくのがわかる。
郡山で在来線に乗り換え、会津若松駅へ。
そこからコートまでは……思いのほか取次の悪さと徒歩の距離がある。
■ レンタサイクルという選択、そして後悔
駅前で見つけた電動チャリ。
「25分ちょっと? いつもテニスにチャリ使ってるし余裕だろ。」
借りることにした。
だが後で気づく——これが“今日の後悔ポイントその1”。
のどかで広い会津の道。
なのに抜いていく車のが「関東ナンバー」。
(車ないの? と思われてる…?)
そんな余計な想像をしながらペダルを漕ぐ。
そして辿り着いた会場は、見晴らしのいい広大な施設。
会津磐梯山の稜線を背に、外コートが20面。ドームもある。

そんなことを思いながらアップしていると、目に飛び込んできたものがある。

5月らしいが、山はすぐそこ。
「東北ベテランって、危険と隣り合わせなのか…」
笑えない冗談を心の中で呟く。
■ 戦う前に、心が揺れる「相手情報」
知り合いと会って話すと、相手についての情報が入った。
「フォアバックともにしっかり打つ正統派、安定感高いですよ。ランキング落ちてるけど、以前は二桁だったはず。」
え、二桁?
嫌な汗がじわっと出る。
そもそも今年は“毎日テニス選手権”の初戦で敗退。
だからこの東北で何とかポイントを……と思って来たが、
グレードCに“脇の甘い相手”など存在しない。
曇り空。ときどき小雨。
オムニが濡れたり乾いたりを繰り返す最もイヤなコンディション。
■ そして始まった、読めない戦い
ウォーミングアップが始まった瞬間、違和感が走る。
事前の情報では「バックも打つ」だったはずが、
実際に返ってくるのは…… オール・スライス。
しかも湿ったオムニに刺さるような、鬼伸びスライス。
深く入ったボールに差し込まれるとアウトするかネットするかのどちらかだ。
「面を合わせて拾っていくしかない…」
弾道を高く、時に短いスライスも混ぜる。
相手もスライスバリエーションを自在に使い分けてくる。
バック側に深く、時にフォア側へ逃げるように。
前に詰められてボレーで決められる場面もあった。
正直、やりづらい。
跳ねは悪いし、ボールは湿って重い。
こちらは何とかラリーの主導権を掴むために、
相手バックにスピンで回り込みフォアをぶつけていく。
しかし——
回り込みフォアの後の“ストレート攻め”をことごとく読まれる。
湿ったスライスが伸びて食い込んでくる。
弾道が低くなり、ネット。
“あと1メートル”の余裕がない。
そのうち、
「この相手からどうポイントを取るのか」
そのイメージが湧かなくなっていた。
■ 終了後、相手からの刺さるアドバイス
結果は 3-6, 2-6。
数字以上に“攻めきれなかった”感が残る試合だった。
終わった後、相手がこう言ってくれた。
「バックに集めてからストレート行くのが早いですね。
せっかくバック狙うならもっと弾道を上げないとダメですよ。」
確かに……。
高い打点をバックに強スピンで叩けていれば、展開は違ったはずだ。
雨の会津の空を見上げながら、
次に片手バックと当たるときは“強スピンのバック狙い撃ち”をやると心に決めた。
■ 終わりに:遠征は、成長への小さな投資
駅までの帰り道、なんと本降りになってしまった。
福島県まできて日帰りで試合も負け、さらに20分以上の駅までの道のりが本降りの雨。。
電チャリは“後悔その2”としてしっかり心にダメージを刻んだ。
でも、それも含めて遠征の醍醐味だw。
今回の試合は勝てなかったが、
自分にとって必要なもの、足りないもの、戦術の穴がくっきり見えた一戦だった。
会津の風景、湿ったオムニ、伸びるスライス、知らない土地の匂い。
すべてが、次への糧になる。
そう思える旅だった。